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『SOGI』通信 No.73


場を弁えない、やかましい案内

 葬儀サービスのクオリティ(質)というのは、葬儀現場に即したものでなければならない。その担当者がいかに担当した葬儀のお世話に真剣になれるか、である。しかも葬儀で最も大切なことに遺族も会葬者も注力できるようにしているか、だ。

 ときどき勘違いしたサービスに出合うことがある。歳を取り、余裕を失った私はつい腹を立ててしまう。
 知人が死に、通夜にうかがった。大手の業者の小さな会館(小さな会館はトレンドとなった感がある)で行われた。
 その日はたまたま空いていたのだろうか、20〜30代の男女8人くらいの担当者がいた。
 玄関を入ると、少し遅刻したこともあって会場はいっぱいだった。といっても式場に座れるのは30席あるかないか、玄関を入ってすぐがロビー。そんなに広くない。立っていた人は20名くらいだろうか、溢れている感じである。私は左奥に「ゴメンナサイ」と小声で言いながら潜りこんだ。そこには知人の死と葬儀の日程、会場を教えてくれた共通の友人がいた。

 読経が中断して司会者が焼香を案内した。まず祭壇の右横に座っていた遺族、親族の焼香が案内され、次に式場内の参列者が4列に並ばされた。担当者の「詰めてください。4列です」と会葬者を指示する声が無遠慮に飛んでいる。するとロビーに立っていた私たちも動かされた。「焼香を終えた参列者の方々が通ります。邪魔にならないように開けてください」。女性担当者のキーンという大声でだ。ロビーにいた者たちはさらにギュッと詰められた。

 会場は広くない。読経の声をかき消さんばかりの焼香の列をつくる男性担当者の命令口調と、出口を確保し、会葬礼品を配る担当者の「仕事を邪魔するな」と言わんばかりの声が連続する。
「会葬者は私たちの指示に従えよ」と言っているように感じ、腹が立った私は、担当者の耳に口を寄せ「葬式中だぞ、うるさい」と叱った。一瞬黙ったが、すぐおかまいなしに声を張り上げていた。

 この担当者たちは、与えられた自分の仕事に熱心なのだろう。その場にいる担当者に「私は仕事していますよ」とアピールし、その場が弔いの場であることはどうでもよくなっている感じに、少なくとも私には、思えた。
 この会社の経営者は細やかなサービス、ホスピタリティを大切にしていることを公言していた。だが、このざまは何だ、と思った。言っていることは正しいが、現実の社員のやっていることは何だ、遺族の気持ちも駆けつけた会葬者の想いも邪魔しているとしか考えられない。押しつけではないか。
 会葬者もそんなに多くない。効率よく焼香させる必要があるとも思えない。

 違う葬儀の話だ。こちらも前例とは違うが大手の業者の施行だ。式場内は階段状になっていて、焼香のため並んだ会葬者が1人前に進むごとに側で案内役の担当者が「お足下にお気をつけください」と声をかける。親切はわかる。でも会葬者はその間ずっとその声を聞かされる。弔いに来ている人の想いをかき乱す「うるさい騒音」でしかない。場を真に弁えないサービスはいらない。


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