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『SOGI』通信 No.61

 3・11東日本大震災について警察庁の集計によると、死亡者1万5895人、行方不明者3021人(2012年5月)。依然として行方不明者は3千人を超えている。この行方不明者数は届出のあった数である。その意味では実数ではない。家族が全滅したケース、他人に知られず旅行していて津波に巻き込まれた人がこのほかにいるかもしれない、という数である。そして届出のあった行方不明者については約9割で今回特例の家族申述に基づく死亡届が提出されている。
 たとえば岩手県では行方不明者1220人に対して1140人、93%の人の死亡届が出され、受理されている。

 死亡者の家族、行方不明者の家族にとっても震災は終わっていない。
 葬式が改めて行われたのは4月下旬くらいからが多く、その形態も寺単位の合同葬や家族や親戚の単位での合同葬であったりした。8月のお盆まで続いた。四十九日、百カ日法要と合わせて行われたケースが多かった。一周忌に実質的な葬式のやり直しを行ったケースも少なくなかったようだ。

 宗教界では「区切り」としての葬式の必要性が説かれることが多かったが、必ずしも「区切り」にはなり得なかったケースも多かったという。
 今回の震災では、6月末から行方不明者についての特例での死亡届の受付が行われた。通例は医師または警察医による死亡診断書、死体検案書を付す、つまり医師や警察の死亡判定をもとに出すのだが、それを家族申述という家族自ら死亡判定をするのだからとても複雑な感情があったろう。

 しかし、現実の生活を営むには死亡届が必要ということで届け出ること以外の選択肢がなかった人たちもいる。それでもなお死亡届の提出を拒んでいる人たちがいる。遺体がないのだから、その状態では死亡届の提出は出せないのも、出してもわだかまりを抱えている人が多いのは当然である。そこで「区切り」をつけるために葬式を出すことを親戚に強要された人たちも少なくなかったという。そして死亡届を出し、葬式をしても精神的に区切れていない人が少なくないという。
 中には死亡届を提出後、身元不明遺体のDNA判定で死亡が判明したケースもある。だが遺体はもうない。身元不明として火葬された遺骨だけがある。

 今回の震災で遺体の発見が遅れたケースでは腐敗や破損を免れなかったケースが多い。また早くに発見されても2週間以上火葬を待たされたケースは多かった。宮城県では約2千体がいったん仮埋葬され、その後に掘り返され、腐敗が進んだ状態で改めて納棺し直され、その後に火葬された。

「死体取扱規則」で「敬意」や「礼」が要求されているからではない。どのような状態であっても遺体が尊厳を要求したのではないか。「死体」ではなく、近親者にとってかけがえのない存在であることを感じていたからではないのか。「遺体」となった死者の困惑、辛さ、傷みに対する共感があったからではないのか。
 このリアルな遺体の痛切さ、遺体不在の痛切さ、を無視して営まれる葬式は、本質的に不毛なのだ、ということを記憶しなければならない。そうでない葬式があまりに多くないだろうか。



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