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『SOGI』通信 No.45

 最近の民俗学者の間ではどうも「斎場」は目の敵のようだ。
 しかも、この「斎場」、言い方がさまざまである。「葬儀をする場所」という意味ではこれでいいだろうが、「ホール」「セレモニーホール」「メモリアルホール」と横文字表記も多い。そこで斎場でする葬儀を「ホール葬」とか呼んでいる。
「葬儀会館」という表記も、単に「会館」とする表記も多い。こちらのほうが「斎場」よりも現代的響きがするからであろう。たとえば「飛鳥会館」「天晴会館」などと使われる。

 一時「多目的ホール」という表記も見られたが、それは斎場建設反対運動の高まりに対して、カモフラージュしようという意図からだったろう。実際に斎場をおいて、友引等の空く時間帯を利用して、地域住民に使用させたり、会員対象の講座、イベント、料理やフラワーアレンジメントの教室等に使用したりしている例は見られる。それは多目的利用ではなく、地域への開放であったり、会員の便宜または利便に供することを目的にしたものである。あくまで葬儀や法事等の利用目的が主であるので、「多目的」とは言えない。

 火葬場が「斎場」「斎苑」等と表記することでの混乱も見られる。
 火葬場を斎場と言うようになったのは、付設して式場を設けたことから始まっている。「火葬場」という言い方はいかにも死に対して露骨であり、周辺住民の感情を刺激するというので、斎場、斎苑と言うようになった。言わば逃げである。

「式場」「葬儀場」というのは言わば仕方なくつけられた名前。「式場」は、本来は「結婚式場」などと呼ばれるのだが、「葬儀式場」ではおさまりが悪かったのか、単に「式場」としたのは、「葬儀」という言葉を使うことを忌避したからだろう。「葬儀場」は自治体が呼称した名前、「斎場」では火葬場と重なるので、特定しやすくするためにつけた名前。いわば官製用語である。
 結婚式場が「平安閣」を「ベルアージュ」等とするように、カタカナの名前をつけるものも増えた。「清月記」、「一草記」、「夢想庵」等の和風名もある。

 小誌では一般名詞としては「斎場」を主に、「葬儀会館」をたまに、「斎場(葬儀会館)」と表示することも多い。あるいはそこで行われる葬儀を「斎場(会館)葬」と言うことが多いか。
 英語では一般的に「フューネラルホーム」であろう。90年代に日本の斎場を筆者が紹介したとき、当時の日本の斎場の式場が大きかったので「フューネラルホール」と翻訳した記憶がある。

 日本の最初期の斎場は60年代であるが、80年代までにできていたのはわずかであり、90年代以降に爆発的に建設されて、現在に至っている。今では小型の斎場(会館)が多く建設されている。
 現在、斎場葬が7割を超す。斎場が増えたから自宅葬がなくなったのか。むしろ斎場なしではお客を獲得できない、という消費者の自宅離れが先行してのことではないか。家、家族、地域の変化に対応して斎場が増え、斎場利用が増加することで地域住民が参加する葬儀が減少し、民俗・習俗の急激な衰退が起こった。葬儀の企業化が民俗・習俗の敵というのは、民俗学者に都合のいい解釈ではなかろうか。





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