トップ > 第5回 葬儀におけるグリーフサポート・周囲の方にお伝えしたいこと   サイトマップ




◆第1回 死別の悲しみへの理解
◆第2回 悲しんでいる遺族を傷つけない接遇のあり方
◆第3回 “きちんと悲しめる”施行
◆第4回 葬儀後のご遺族に対してできること
◆第5回 周囲の方にお伝えしたいこと
◆第6回 スタッフのグリーフをどうするか
◆番外編 グリーフサポートの観点からみた司会のあり方 New


葬儀におけるグリーフサポート・周囲の方にお伝えしたいこと

 第5回目の今回は、ご遺族の周囲の方にお伝えしたいことについてお話しします。
 ご遺族の周囲にいらっしゃる方=親戚の方や会葬者の方の中には、ご遺族をどうやってサポートしていったらよいかについて、強い関心をもっている方が少なくありません。多くの人が、ご遺族を何とか助けたいと思っています。しかし、ご遺族に対してできるかぎりのことをしたい、と思っていても、どうやってご遺族に接してよいかわからないためにできないということが多いようです。
 そこで、今回は、ご遺族のサポートの仕方について役立つ情報をお伝えしたいと思います。

●ご遺族を遠巻きにしない
 よく、「今はそっとしておいてあげるのが一番」と周囲の方がおっしゃっているのを聞きます。しかし、それは本当にそのご遺族にとって一番よいことなのでしょうか。もちろん、ご遺族自身が本当に「今はそっとしておいてほしい」「誰とも話したくない」と思っている場合はそれでよいのですが、ときには支援を必要としている人を、その便利な言葉によって遠巻きにし、放置してしまうこともあります。

 特に、自死や事故死、犯罪被害等、病死以外の突然の死の場合に、ご遺族への対応の仕方がわからないがゆえに、支援を必要としている状態のご遺族を遠巻きにしてしまいがちです。その結果、ご遺族は「誰も助けてくれない」「なんだか避けられているようだ」と感じていらっしゃるかもしれません。

「今はそっとしておいてあげよう」は一見、相手を思いやっているかのように聞こえますが、単に、ご遺族にどう接してよいかわからないために、接することを避けている自分を正当化しているだけなのかもしれません。「今はそっとしておいてあげるのが一番」とは、本当に相手のことを思って発せられている言葉なのかどうか、その都度振り返ってみたいものです。
 では、具体的に、周囲の方はどのように振る舞ったらよいのでしょうか。「葬儀のとき」と「葬儀の後」に分けて、お伝えします。

■葬儀のときに


●ありのままのご遺族の状態を受けとめる
 大切な人が死んでしまった非常事態に、ご遺族の様子が普段と異なるのは当然のことです。第1回目の勉強会のときにお話ししましたが、死別を体験すると、ご遺族はさまざまな心と体と行動の変化を経験されます。そんな状態のご遺族は、葬儀の場で、挨拶がうまくできないこともあるでしょうし、参列者に対して礼を欠いてしまうこともあるでしょう。言動や行動がことさらにおかしいときもあるでしょう。

 でも、そうなって当たり前なのです。その様子を見て、「非常識だ」「喪主なのに」などと、ご遺族を責め立てることのないようにしましょう。
「ちゃんと振る舞えないのが当たり前なのだ」という理解のもと、参列者への挨拶などは親戚の方が代理で行うのもよいと思います。

●思い思いのやり方で
 思い思いのやり方で故人を送ることは、ご遺族のグリーフワークにとって重要なことです。ですから、「〜してはいけない」という言い方で、ご遺族がしようとしていることを止めたり、否定したりしないようにしましょう。「〜してはいけない」とおっしゃる方はおそらく、ご自身の経験をベースにそのように発言されるのだと思いますが、その経験に、ご遺族がしようとしていることを止めるほどの根拠や必然性が果たしてあるのかどうか、振り返ってみたほうがよいのではないでしょうか。同じ理由から「葬儀とはこういうものだ」と決めつけて、ご遺族がしようとしていることを否定しないように気をつけましょう。

 また、「〜しなくてはいけない」という言い方でご遺族の負担を増やさないことも大切です。
 例えば、「通夜は夜通し起きていなければならない」「線香を絶やしてはいけない」という親戚の方の一言によって、仮眠をとることもできずに線香の番をして過ごしたご遺族がいらっしゃいました。おそらく親戚の方は、何も喪主一人にそれをさせようとしておっしゃったのではないと思うのですが、「〜しなければならない」と言われると、ご遺族の心は平常の状態ではないので、強迫的にそうしなければならないと思い込んでしまうこともあるのです。
 このようなことは、言葉の用い方を気をつけるだけで、ある程度回避できるのではないかと思います。
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◎避けたほうがよい言葉の用い方
×「〜してはいけない」
×「〜しなくてはいけない」
×「葬儀とは〜いうものだ」という決めつけ
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●喪主の負担を軽くする
 最近の葬儀は、悲しみの最たる当事者であるはずの喪主が、ホスト役となって親族や会葬者をもてなさなければならないようなスタイルになってしまっており、喪主の負担がたいへん大きくなっているように思います。

 しかし、ご遺族は心身ともに極限状態にありますので、葬儀にまつわる事務手続きや、会葬者への挨拶を、とてもつらく感じていることがあります。周囲が代わりにやってあげられることは、積極的に代行を申し出るとよいでしょう。喪主や故人と親しいのであれば、葬儀全体の「世話役」を引き受けることを申し出るのもよいと思います。
 また、そこまででなくとも、例えば、お布施の封筒の表書きを書いてあげる、などの細かいちょっとしたことが、ご遺族の助けになるでしょう。

●体調面への気遣い・差し入れ
 ご遺族は、自分自身の体調についてまで気が回らないことが多いので、暑すぎたり寒すぎたりすることのないように、できるだけ快適に過ごせるよう、必要なものを差し入れるのもよいでしょう。例えば、寒い季節であれば、使い捨てカイロ・ひざ掛け等です。また、食べ物や飲み物―特に高齢の方は、水分が不足して脱水状態になったりすると、命に関わる危険な状態になることもありますので、こまめにお茶を入れて差し上げるなど、さりげない働きかけが役に立つと思います。

 予期できなかった突然の死の場合は、ハンカチや着替え、洗面用具の差し入れが役に立つこともあると思います。ご遺族が何を必要としているのかわからない場合には、ご遺族に直接尋ねるのがよいでしょう。このとき、「何か必要なものがあったら言ってね」というような曖昧な表現ではなく、「今から買い物に行くけど、何か買ってくるものある?」のように、具体的な申し出のほうが、ご遺族は頼みやすいと思います。
●なるべく普段の状態に戻りやすいように
 近しい親戚の方などであれば、葬儀のときにはご遺族はとても気持ちが回らない家のことなどを、代行していただけるとよいと思います。例えば、台所の片づけ、庭木の水遣り、金魚の水槽の手入れ、など、葬儀後、なるべくご遺族が普段の生活に戻りやすいように整えることが役に立つと思います。

●ご遺族を質問攻めにしない
〔なぜ、という質問が心に痛いこともある〕
 私の父が自死で亡くなったとき、最もつらかったことは、「なぜ死んだのか」「どうやって死んだのか」「これからどうするのか」を、会う人ごとに必ずといっていいほど訊かれたことでした。
 これは、自死の場合に限らず、病死で亡くされた場合でも同様で、「なぜ?」と訊かれ続けることで、例えば自分の看病の仕方が悪かったと責められているかのように感じてしまうこともあります。また、「どうやって死んだのか」「どういう状態で死んだのか」という質問は、ご遺族にとっては興味本位の問いとしか受けとれないもので、説明するたびごとに、死の状況を思い出さなければならない苦痛を伴うものでもあります。

 また、大切な人が死んで間もないときに、「これからどうするのか」を訊かれても、ご遺族はまだそのようなことを考えられる状況ではないことがほとんどです。これは、無理解な質問であると言えるでしょう。またご遺族に、自分がその問いに答えられないことによるさらなる苦痛を感じさせてしまうこともあります。ご遺族のこれからのことを思いやるのであれば、「これからどうするの?」ではなく、他の言い方で伝えるべきでしょう。「これからどうするの?」は、混乱と悲しみの最中にいるご遺族を「ああ、これからのことを考えなきゃいけないんだ」と焦らせてしまうことにもなりますから、注意が必要です。

〔ご遺族は同じことを繰り返し訊かれている〕
 質問する側にとってはたった1回の質問でも、訊かれる側は会う人ごとに同じことを訊かれ、何十回と同じ説明を繰り返さなければならず、うんざりしているということがあります。その説明が、ご遺族にとって苦痛を伴うものであったときはなおさらです。

 亡くなったときの状況を事細かに繰り返し語ることがグリーフワークにつながることもありますが、ご遺族のほうから主体的に「語る」ということと、質問されて「語らされる」ことはまったく別物なのです。  ご遺族がこのような「質問攻め」の状況に陥ってしまうことはしばしばあり、死に至る経緯を、繰り返し繰り返し質問されて答えなければならない苦痛から、アナウンスで言ってほしいとおっしゃるご遺族もよくいらっしゃいます。特に故人が生前とても元気そうに見えたときに、「あんなにお元気だったのに、なぜ」という質問から、この苦痛がはじまることが多いようです。

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◎控えたほうがよい言葉かけ=質問攻め
×「なぜ死んだの?(死の「経緯」や「理由」を問うこと)」
×「どうやって死んだの?(死の状況を興味本位に問うこと)」
×「これからどうするの?」
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●ご遺族の状態を見た目で判断しない
〔ご遺族の状態は見た目ではわからない〕
 ご遺族の方が、思いのほか「元気そうに」見えることがあります。
 確かに、ご遺族が、テキパキと物事を決め、冗談を言ったり、笑ったりなさっていると、周囲の方はしばしば「もう大丈夫なんじゃないか」と誤解してしまうことがあります。
 しかし、しっかりしているように見えるからといって、ご遺族は大丈夫なわけでも、悲しんでいないわけでもありません。もしかすると、普段のように振る舞うことで、なんとか持ちこたえようと必死で努力していらっしゃるぎりぎりの状態なのかもしれません。
 ですから、「あなたは強いわね」「元気そうでよかった」など、このような言葉はご遺族をたいへん傷つけるものですから注意が必要です。

 これは、葬儀社の職員の方にも強くお伝えしたいことですが、ご遺族の状態を、見かけで判断しないようにしたいものです。葬儀社の職員が、ご遺族のことを「あまり悲しんでいないようだ」「故人に対する思いがないようだ」と、見た目で判断し評価することは、回りまわってご遺族を深く傷つけてしまうことがあります。職員の態度に表れてしまったり、あるいは、何らかの形でご遺族の耳に入ったり、ということはままあるのです。
「あまり悲しんでいないようだ」と言われているのが、万が一ご遺族の耳に入ったら、どんな気持ちになるでしょうか。

 葬儀社の職員は、故人やご遺族のことを何も知らない第三者なのですから、ご遺族の悲しみの「度合い」を、見た目で判断・評価し、ご遺族を深く傷つけてしまうことのないようにしたいものです。

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◎控えたほうがよい言葉=無理解
×「あなたは強いわね」
×「元気そうでよかった」
×「あまり悲しんでいないようだ」
×「故人に対する思いがないようだ」
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〔悲しみの表現方法・乗り切り方は人それぞれ〕
 人にはそれぞれの切り抜け方があります。ある人は本当につらい状況を示すことによってつらさを表明しますが、ある人は何事もなかったように振る舞いながら、あるいはまったく違った表し方をしながら、そのつらさに耐えているということがあります。平静さを保つことで何とか乗り切ろうとしているのかもしれません。
 その表し方が、自分と異なるからといって、それを「あまり悲しんでいないようだ」と評価することのないようにしましょう。

■葬儀の後で


●具体的な援助の申し出
 葬儀の後は、なかなか普段どおりの生活には戻りにくいものです。
 必要に応じて、さりげなく、次のような援助を申し出てください。
 ・食事のしたく
 ・買い物
 ・葬儀の後片づけ
 ・電話に出ること
 ・ペットや植物の世話をすること
 ・子どもの面倒を見ること
 ・病院へ一緒にいくこと
 ・遺族会に付き添うこと

●ご遺族を急かさない
 ご遺族を急かすような言葉かけは、ご遺族を追い詰めることですから、控えたほうがよいでしょう。特に、遺品の整理や納骨の時期について、「早く遺品の整理を」「納骨はどうするの」等の周囲のアドバイスがご遺族を苦しめてしまうことが多いようです。

 特に、「悲しんでいても、死んだ人は喜ばないよ」等、亡くなった人を引き合いに出して、悲しんでいる状態を責め立てるようなことのないようにしましょう。ご遺族は泣くことすらできなくなり、まったく行き場をなくしてしまいます。

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◎控えたほうがよい言葉かけ=急かす
×「早く遺品の整理を」
×「納骨はどうするの」
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◎控えたほうがよい言葉かけ=悲しんでいることを責め立てる
×「いつまでも泣いていてはだめ」
×「悲しんでいても、死んだ人は喜ばないよ」
×「悲しんでいても、死んだ人は生き返らないよ」
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◎控えたほうがよい言葉かけ=立ち直りの時期や方法を勝手に決める
×「もうそろそろ立ち直ってもいいんじゃない」
×「早く新しいパートナーを見つけて元気になって」(配偶者を亡くした方に対して)
×「またつくればいいじゃない」(子どもを亡くした方に対して)
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●根気のよい働きかけを
 うちひしがれているときは、人は苦しみのあまりに心を閉ざしてしまって、周りからの支えや働きかけを拒否してしまいがちです。ご遺族の気持ちを心にとめ、根気のよい働きかけをなさってください。いつでも手を差し伸べる用意があることを、繰り返し、伝え続けてください。

 私自身が父を亡くしたとき、何よりも助けになったのは、その後数年間、2週間に1度のペースで、幼馴染みが手紙をくれたことでした。その手紙は、他愛もない内容で、傷つけるようなことも書いてないかわりに、心を楽にしてくれるような言葉もとくになく、ただ、最近読んだ本がどうだったとか、季節の移り変わりのことが書いてあり、食事にたとえるならサラダのような、さりげない内容の手紙でした。
 こちらが全く返事を出さなかったのにもかかわらず、ずっと継続的に気にかけてくれていることが、しばらくたってからじわじわと効いてきたように思います。今は、その友人からの手紙は全くありません。友人が意識してそのとき手を差し伸べてくれていたのだということを、しみじみと思い出している今日この頃です。

●手を抜いたときに相手を傷つける
 前回の勉強会で本の紹介をしましたが、「こういう本があるよ」ということを情報として伝えることは有用ですが、「この本を読めば絶対に癒されるから、ぜひ読んでみて!」などのように言うのは、ご遺族の負担を増すことでもあり、不快感を強めることもあります。

 死別をテーマとした本の中にも著名なものがたくさんありますが、葬儀後のご遺族の手元に同じ本が何冊も集まり、実はその本が大嫌いだというご遺族が辟易しているという話もよく聞きます。ご遺族がもっていらっしゃる死後の世界観と、本に書かれてある内容が異なるときに、ご遺族に苦痛を与えるものになってしまうことが多いようです。
 本を渡して済ませよう、何か劇的に効く言葉を一つかけて済ませよう、という「手抜き」をしたときに、ご遺族を深く傷つけてしまうことが多いように思います。

●傷つけてしまうことを恐れないで
 控えたほうがよい言葉かけについて紹介しながら、ご遺族のサポート方法についてお話ししました。周りの方の言葉や態度によって、まるで二次被害のように苦しめられているご遺族があまりにも多いので、今回このようにお話ししましたが、傷つけることを恐れるあまり、ご遺族を遠巻きにしてしまうことのないようにしたいものです。

 人が人と関わるときに、相手を100%絶対に傷つけないように働きかけようとするのは不可能です。とりわけ、死別直後のご遺族は、特に周りの言葉や態度に敏感になっていますから、こちらが思いもかけないようなことに不快感を感じたり大きく傷ついたりしていることはしばしばあります。

 ときには取り返しのつかないような深い傷つけ方をしてしまうこともあるかもしれません。しかし、ご遺族は、そのときあなたが手を差し伸べようとしてくれていたことを、いつかきっと思い出されます。それは、もしかすると、何年後、何十年後のことかもしれません。
 決して、ご遺族を傷つけても構わないということではありませんが、傷つけることを恐れて何もしないよりは、継続的に「あなたのことを気にかけていますよ」という働きかけをし続けることは、何よりのご遺族の助けになると思うのです。

 次回最終回は、スタッフのグリーフをどうするかについてお話しいたします。


葬祭事業者のための「グリーフサポート」勉強会 『SOGI』107号
鷹見有紀子  



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