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碑文谷創

 法医学関係の本には検死の実例があって、異状死の実際を知ることができる。一方では、推理小説を読むような楽しみがあるが、他方では、死によって人が「死体となる」ということはどういうことかを教えてくれる。死体現象について正確を知識を提供してくれる本を中心に紹介する。

■石山いく夫『法医学への招待』 筑摩書房、1991
 
「筆者が東京大学に在職中に経験した法医鑑定のなかから、法医学および臨床医学の面から見て重要と考えられた症例を選択し、法医鑑定の分析法を解説したものであり、換言すれば、筆者の『鑑定集録』といってもよい内容」
 著者は東大法医学教室の第6代教授、その集大成。法医学について総合的で正確な知識を得るには最適な本。死体現象にも詳しい。内容は読みやすい。
 
 法医鑑定とは何か/死体現象/生活反応/ショック論/外傷論/脳幹部損傷/窒息論/溺死論/新生児法医学/疾患論/中毒論/血液型/DNA論/法医鑑定の未来

■上野正彦『死体は生きている』 角川書店、1990
 
 法医学に対する一般の関心を著しく高めたのは、著者の『死体は語る』(時事通信社、1989)がベストセラーになったことによる。テレビ化もされた。
 著者は東京都監察医務院の元院長。現場での膨大な検死の経験をもとに数々の本をものにしているが、知識を得るという観点ではこの本が最も役に立つだろう。
 他に、『死体は知っている』(角川書店、1994)、『死体の証言』(山村正夫との対談、素朴社、1990)などがある。

■柳田純一『死にかたがわからない』 東京書籍、1994
 
「人は必ず亡くなる。…病気にかかって、医療をうけつつその病気で亡くなる。これが現代のわが国における『ふつうの亡くなりかた』である。みんなが『ふつう』に亡くなるかというと、そうはいかない。…『ふつう以外』の亡くなりかたを『異状死』という。…わが国で異状死は総死亡数のほぼ15パーセントになる。十人にひとりかふたりであるから、あなたも異状死にならないとはかぎらない」
 内容もいいが、文章もいい。慶応大法医学教室教授。東京都監察医務院での経験もある。最後に付された「異状死をめぐるわが国の制度」はとても参考になる。




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